(1)事業の概要

令和元年度のダンス授業の実施状況調査では,中学校の保健体育科教員の多くが,ダンス授業の指導内容や指導方法等に不安を抱えながらも授業を実施し,ダンス指導の基礎基本となる指導方法や教材について学ぶ環境や情報提供ツールの整備が必要であることが示唆された.
そこで本年度は,調査対象を拡大して,多角的観点から指導の成果と課題を検証すると共に,「知識」と「技能」を関連付けた指導実践及び具体的な指導方法・教材例等について深化・発展させ,新学習指導要領を踏まえた目指すべき授業の在り方を提案することを目的とした.
まず,全国の中学校に勤務する教員を対象にアンケート調査を実施し,1484名から回答を得た.分析の結果,ダンス授業の指導に不安があると答えた教員が8割を超え,教員自身にダンス経験がないことや示範技術が不安要素の大きな原因になっている可能性が示唆された.また,現代的なリズムのダンスを実施している中学校が約6割を占め,その授業内容に関しては,「振付のあるダンスを踊る」という回答が最も多く,「リズムに乗り自由に踊る」活動の実施は少なかった.また「創作ダンス」についても,「即興的に表現する」の実施率が低い状況であり,学習指導要領に即した指導法や教材を現職の教員に提供することは急務である可能性が示唆された.
また,ダンスの技能の要素をまとめた教材及び学習指導要領に基づいた単元計画例を作成し,具体的な指導に関する動画素材と共にホームページ上で公開した.それらの教材や指導法等を基に,教員対象の研修会や各中学校で実際にダンス授業を行い,成果と課題を検証した.その結果,教材や動画素材ともに,授業づくりの参考となりうるという意見が得られた.

(2)実施体制

➀ワーキンググループ:体育科教育,コーチング学,舞踊教育学を専門とする研究者から組織する

代 表 者:栫 ちか子 (鹿屋体育大学 講師)
共同研究者:金高 宏文 (鹿屋体育大学 教授)
浜田 幸史 (鹿屋体育大学 准教授)
佐藤 豊 (桐蔭横浜大学 教授)
高橋 修一 (日本女子体育大学 教授)
石川 泰成 (埼玉大学 准教授)
檜皮 貴子 (新潟大学 講師)
山﨑 朱音 (静岡大学 講師)
河合 史菜 (長崎大学 助教)

②有識者(アドバイザー):代表者・共同研究者から選出されたメンバーに加え,実施協力校の外部指導者やダンスの指導に長けた教員等で構成する

小松 恵理子(鹿児島女子短期大学 名誉教授)
田巻 以津香(東海大学 講師)
萩原 香織 (鹿屋体育大学 非常勤講師)

③調査協力組織
1. アンケート・インタビュー調査協力
・体育・保健体育ネットワーク研究会
北海道・東北ネットワーク,北信越ネットワーク,関東・東海・関西ネットワーク,中国・四国ネットワーク,九州ネットワーク
・県・市教育委員会等
高槻市教育委員会
2.ダンス授業実施協力校
大阪府高槻市内中学校,鹿児島県内中学校
3.集計・分析等協力
高岡綾子(鹿屋体育大学研究補助員),高岡瑞季(鹿屋体育大学研究生),鹿屋体育大学学部生

スポーツ庁委託事業